2012年6月10日日曜日


NHK総合で放送していた「双方向解説 そこが知りたい! 激論!TPP」(11月3日放送)より。

NHK解説委員の方々が討論した、TPPに参加することによるメリットやデメリット、どうすべきなのかなど。

日本の進むべき方向性も。

[TPPに参加することで、どうなるか?]

[メリットは、デメリットは?]

関税が引き下がった場合に、輸出が増えるとか、定量的な利益も生まれると思う。ただ、重視したいのは、TPPというのは関税の撤廃と同時に、ルールの策定がひとつの柱になっている。

例えば、日本企業が海外から国内に送金しようとした場合に、送金が自由に行かないというルールが存在する。そういったものをなくすために、先手を打ってルールを作る。

環境問題にも言えることだが、ルールとかスタンダードを最初に手にした人たちが、利益を受ける時代になっている。TPPはその典型的な交渉で、ルール作りの分野で先手を打つというのは、経済面でも大きな利益があると思える。

イニシアチブをとらないと、なかなか利益を受け取れない。それを考えると、日本は外交通商分野で、イニシアチブをとってこなかったという経緯がある。TPPなどの自由貿易の枠組みに入らないと、さらなる国際社会での地位の低下を招いてしまうかもしれない。

じゃあ、TPPと代わる他のものをどうしていくのかという明確な戦略もないわけだから、TPPに入れという訳じゃないけれど、ただ、日本はこれまで農業政策の名のもとなど、いろいろ理由はあるが、二国間のFTAなどの枠組みを、やってこなかった。消極的な姿勢を、続けてきた。

その結果何が起きたかというと、これまで日本は非常に強い分野だといわれていた自動車でも、アメリカでは韓国メーカーに追い上げられていて、シェアが確実に奪われてきている。これは日� �全体の国力の低下を招く大きな流れになっている。

さらにこれは、我々の雇用にも影響を及ぼすし、国民の利益を大きく損なう面もあるので、こうした流れをゆるしていいのかどうか。農業分野はクローズアップされているけど、全体の国益を守るためにも、TPPをきっかけにして、さらなる外交通商戦略を構築する足掛かりにすべき。

2.7兆円という数字は、正確な伝わり方をしていない。これはTPPの効果についての内閣の試算で、10年後に協定が100%実現された場合に、どれくらいのGDPを押し上げるかという数字。

10年後に協定が100%実現した場合は、2兆7千億円分、GDPを押し上げる。そういう試算。なので、2.7兆円を10で割るものでもない。徐々に上がっていって、10年後にはそのくらいの効果があるというもの。

ただ、2.7兆円がどれくらいの数字かというと、例えば、円高が急激に来た場合、景気が後退したら、あっという間に消し飛んでしまうくらいの数字。

そうした視点に立つと、なんだ効果がないんだと思われるかもしれないけれど、これはルール作りの場である。非関税障壁をどうするか、あるいは規制緩和の問題。その辺が出てくると、今は計算が できないような、大きなメリットも出てくる可能性がある。

農林水産省の試算のように、何兆円も損をしてしまうという計算もある。でも、損をするという意味だと、関税をゼロにするということは、年間の関税収入は、8千億円。それが削られるということでもある。つまり、税収が減るということ。

そんな中で、プラスマイナス両面あるけれど、規制緩和などを含めると、プラスは若干出るだろうという、試算である。

そして、ルール作りは大切なので、交渉にすら参加しないというのは、選択肢としてないんではないかと思う。

[安い輸入品が入って来て、デフレ効果を生んで、それが円の価値を上げて、円高が長期化するという懸念については?]

安い輸入品が入って、だから必ずデフレになるとは、限らない。国内で需要があって、それを例えば安い原材料を入れて、製品化して、売って、付加価値を高めれば、物価が全体として下がるかは、分からない。

だから、安いものが入って来るからといって、必ずしもデフレになると直結する話ではないと思う。